人の動き研究室は、1986年に「人の動き」を基本に「店」を分析した「入りやすい店売れる店(日本経済新聞社刊)」を出版しています。
当時は、バブル経済が始まり、スーパー・コンビニ・大型店門店が台頭し、それまで日本の商業の中心であった商店街が音をたてて崩壊しようとしている、商業における第一の激変期でした。
「人の動き」という観点からこの出来事を観察すると、それは店における人間関係の一大変革期ととらえることができます。すなわち、なじみ客を対象に「常連接客」を行ってきた商店街から、見知らぬ客(一見客)を対象に「一見接客」を行う店への大転換でした。客は、急速な都市化や販売競争の激化等を背景に、人間関係のしがらみにしばられた不自由な店を離れて、匿名性が守られ自由に買い物ができる店へと引きつけられていったのです。
そのような時代に、店員が店でどのような行動をすると客が遠ざかり、どのような行動をすると引きつけられるのかを、「人の動き」という観点から観察・分析したのが「入りやすい店売れる店」という本でした。
●店員が「いらっしゃいませ!」を言うと客が遠ざける。
●店員が店頭や店内でじっと客を待つと客が遠ざかる。
当時の商店街や百貨店を中心とする店では、なじみの人間関係のルールや礼儀作法を基本にした接客方法が常識だったために、このような報告は多くの方々に大変衝撃的に受け止められることになりました。
その後、店は急速に大型化・セルフ化していきました。そのことにより、店員の仕事は品出しやレジカウンター中心になったため接客は減り、客に対する影響力は少なくなっていきました。
そして、インターネットの普及に伴いネットショップが急速に発展しました。あらゆるものが、ネットで買えるようになった現在、様々な店がその影響を受け、リアルショップのあり方そのものが再び問い直されることになったのです。
これが第二の激変期です。
私たちは店の変化をおよそ20年周期で予測しています。
下の図のように、第1世代の店(商店街・百貨店)、第2世代の店(スーパー・コンビニ)、第3世代の店(SC、大型専門店)を経て、今、店(リアルショップ)はいよいよ第4世代が中心になろうとしています。

第4世代の店とは何か?
私たちは、第4世代の店は「移動空間の店」だと考えています。
ほしいもののほとんどがネットで買える時代に、人がリアルショップでモノを買うのは「移動空間」に絞られてきます。すでに、通勤や通学その他様々な「移動」のルート上に多くの店が生まれ、それらの店がたくさんの客を引きつけています。
すなわち、今日の店の主役は、「駅ナカ・駅ソト」の店になります。それらの店の特徴は次の通りです。
●小型〜中型の店
●店員が接客を行う
つまり、第四世代の店では再び店員と客との人間関係が重要になって来るのです。
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